ケンシ@『学び合い』と真正の学びブログ

本の紹介、高等学院の立ち上げ、育児について書いています。以前は、『学び合い』、真正の学び、社会科教育などをメインに書いていました。

『7割は課長にさえなれません』〜正規雇用という身分制度〜

 

オッス!
ケンシです!


今日は


『7割は課長にさえなれません』〜正規雇用という身分制度


について書きたいと思います。


『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』 城繁幸  PHP新書 2010


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を読みました。


10年前の本ですが、その主張の鋭さは今も輝きを失いません。


まず、著者は

 

 

 

35歳以上の基本給の昇給はほとんどゼロに抑えられている35

千九百九十年入社の大卒者で課長以上に昇格している人間がたったの二十六パーセントしかいないというデータもあるほどだ
→二千七年読売新聞社大手100社対象調査

平均以上の人間に敬遠され、平均以下の人間にウケがいい日本型雇用96

リストラも倒産も一切不安がないというのか、大手であっても年功序列制度が崩壊する中あなたの給与はローンを払い続けられるだけ毎年上がり続けていく自信があるのか、現にローンが払えずに持ち家を手放す人間がふえているのではないか、そして日本以外の国でもローンが存在する以上終身雇用でないとローンが組めないというのは銀行担当者の怠慢の言い訳ではないのかそもそも果たして日本型雇用において、ほんとうに幸せな人生だったと言いきれる人間がどれほどいるのか、それは全ての労働者の上半分の、そのなかでも勝ち逃げできた団塊の世代以上の男性正社員だけではないのか
筆者が言いたいのは、じつは多くの日本人は、日本型雇用によって守られる側ではなく、むしろさまざまなかたちで搾取される側であるという事実だ。それは一見すると目に見えないため、自分が不利益を受けているとは気づいていない人も多い151

終身雇用を前提に勤めている企業名で貸すという日本のローンシステム自体がとっくに時代遅れなのだ154

 

 

 


と、終身雇用制度を批判します。


そして、その批判のもとにこの制度の中で生まれた正規雇用、非正規雇用という区別について

 

 

 

派遣社員とは、いちばん外側の弾除けのようなものだ111

正規雇用、まずはリストラし、それでも必要ならば正社員のリストラを認めよう、正社員だけは最後まで守れ、非正規雇用は正社員より身分の低い存在であるこれこそが日本型雇用の真の姿である113

カースト制度のような身分制114

本来、自由競争が行われていれば有期雇用というリスクの高い雇用形態の方が終身雇用より賃金が高くなるはずだ、そう考えるとリスクの高い人間が低賃金で使い捨てにされている日本の現状ははっきりいって異常だろう115

問題の本願は正社員サロンという既得権にあって、しかもそれは、メーカーから金融まで、あらゆる産業の上層部に根を張り、緩やかな横のつながりを形成している157

新聞やテレビといった大手メディアもサロンの住人である彼らは良かれと思って番組を作り、記事を書くものの、それが結果としてお茶の間に彼らのマナーを流布し、結果的にサロンとは無縁な国民の多数をサロンのシンパに変えてしまっている157

 

 

 

と述べていき、


その解決策として海外の事例などを引用しながら、

 

 

 


整理解雇の四要件
→人員整理の必要性  そもそも、解雇の必要があること。
→解雇回避努力義務の履行  役員報酬の削減配置転換などのあらゆる経営努力がなされたにもかかわらず人員整理が必要であること
→被解雇者選定の合理性  人選基準が合理的で公平であること
→手続きの妥当性  従業員への説明、公正な手続きを踏んでいること   108

リーマン・ブラザーズを部門買収した野村証券もリーマン型ハイリスクハイリターンの契約社員コースと、野村型終身雇用コースに分け、社員に選択させているという115

労働市場の完全な流動化 148  149
→具体的には正社員に対する解雇規制、労働条件の不利益変更規制を緩和し、処遇の柔軟な見直しを可能とする、現在、労働契約法により労使でルール化すれば賃下げや降格は可能ではあるが、そういった方向での議論はほとんど進んでいない、そこで金銭解雇も含めて法律で明文化し一気に経済全体の新陳代謝を進めるべきだ
それは日本に残された最大の規制緩和である3300万人の正社員と1600万人の非正規雇用労働者が自由競争することになるのだ(中略)職場レベルでは正規と非正規の壁が消え利益という果実もコストカットという痛みも両者で分かち合うことが可能となる多少の時間はかかるだろうが、ゆくゆくは勤続年数ではなく、担当する仕事内容で賃金が決まる職務給システムに移行するはずだ148  149
そんなの非現実的だと言う人もいるが、すでに雇用労働者の三分の一を占める非正規雇用労働者は、とっくに職務給が成立しているではないか。規制さえなくなれば、それがいちばん自然な状態なのだ149

解雇や賃下げを柔軟に認め、労働市場流動性を高めつつ失業給付や職業訓練などのセーフティーネットはきちんと整備する、フレクシキュリティ という考えがEUでは主流になりつつある、失敗を許さない潔癖主義と決別し、失敗を前提にした成熟した社会への転換だ171

 

 

 


と提案していきます。


今、読んでもすごく労働制度について考えられる1冊です。おっすすめです。

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