ケンシ@『学び合い』と真正の学びブログ

本の紹介、高等学院の立ち上げ、育児について書いています。以前は、『学び合い』、真正の学び、社会科教育などをメインに書いていました。

なぜ世界政府はないのでしょう?


なぜ世界政府はないのでしょう?


今日も以前、紹介した『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題 「あなたは自分を利口だと思いますか?」』
(ジョン・フォードン 小田島恒志 こうし 小田島則子 河出書房 2017)
に載っていた問いとその応答について書きたいと思います。


なぜ世界政府はないのでしょう?


筆者は、


ダンテ『饗宴』
「もし全世界と全人類が一つの君主国しかもたなければ、つまり一人の支配者の下での一つの政府だけをもつならば」戦争は集結するだろう
(P140)

カント、人類史の頂点は「国際国民国家

アインシュタイン
「司法の決定により国家間の紛争を解決することのできる世界政府を是非作らなければいけない。この政府は各国政府の同意による明確な憲法に基づき、その法によって攻撃用兵器の独占的裁量権が与えられなければならない」


というような、ダンテ、カント、アインシュタインを引用し、
「各国政府の同意」として、


フランシス・フクヤマ  『歴史の終わり』
(各国政府の同意=リベラルな民主主義と資本主義?)


を引用します。


フクヤマは、「全世界が自由市場を基盤としたリベラルな民主主義に向かって進み出した今こそ「歴史の終わり」(国際社会にリベラルな民主主義と資本主義がいきわたれば、それ以上の社会制度の進展はなく、政治体制は安定し、戦争や内紛もなく平和な社会が永続するという考え方)である」
と語りましたが、それを筆者は、中東やアフリカを例に出し、


薄弱な楽観主義(P142)


と批判しました。そして、


40年代、50年代の
ジョージ・オーウェル1984
オルダスハクスリー『すばらしい新世界
を引用し、


「世界政府が樹立された暁の地獄絵図。個人には何一つ残されていない魂の抜けた世界」


を紹介。

世界政府に対し、批判的な見解を示しつつも最後は、グラント将軍の南北戦争後のセリフ
「将来いつの日か、地球上のすべての国が共通の国会のようなものを作ることに同意し、そこで国際的な難問を審理し、そこでの決定が今日の最高裁の決定と同様な拘束力をもつことになるであろうと私は信じる」  (p146)


を引用し、論をまとめました。


直接的な表現は、ありませんでしたがこのような論をまとめると


各国政府の同意が難しい点、人々が自由を求め、制約を嫌う点。この2点の理由で世界政府は現在存在しないが、未来に期待する


という主張になるでしょうか。


EUの授業、政治・経済、倫理などで使える知識、考え方に富んだ本の一節でした。

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