ベネッセ!
ケンシです!
今日は
論争問題をどう扱うか〜『ハーバード法理学アプローチ』〜
について書きたいと思います。
ケンシは、討論の授業に取り組んでいます。
主権者を育てるために
社会問題を分析し、自分の意見を構築し、表現する力を養う必要があると考えているからです。
参考にしていたのは、日本史ですが、加藤公明先生。
本人の話や、著書に魅せられたからです。
しかし、討論授業を実践している中で2つ課題を感じるようになりました。
1つ目は、
こちら
https://kenshimanabiai.hatenablog.com/entry/2021/03/14/183453
でも書かせていただいたように
なんとなく討論で意見を言っている
生徒です。
討論やらされるからとりあえずこっち
と意見を選ぶ子です。
2週間経てば自分がどっちの意見だったか忘れます。
次の課題は、
メリットデメリットの水掛け論
で終わるパターンです。
どちらもメリットデメリットがある。それを言い合い、批判し合い
なんだかどっちもメリットデメリットあるね、みんな違ってみんないい、うふふ
のようになるパターンです。
こうした2つの課題を乗り越えるためには
生徒それぞれの価値基準を明確にする必要がある。
と考えていました。
価値判断をさせたり、自分の価値基準をメタ認知させたりしてきましたが、しっくりきませんでした。
そんなとき、日本に帰国してから(3月)
読めたのがこちら。
ハーバード法理学アプローチ 高校生に論争問題を教える ドナルド・W・オリバー、ジェームス・P・シェーバー 渡部竜也ら訳 東信堂 2019
です。本書はタイトル通り、高校生に論争問題を教えることができるようになる理論書です。
本書では
公的論争問題の主な分析作業のあらまし
1 具体的な状況から一般的価値を抽出する
2 尺度的構成として一般的価値概念を用いる 181
3 価値的構成体の価値対立を確認する
4 価値対立状況の分類を確認する
182
5 考察中の問題と類似した価値対立状況を発見、また創造する
6 一般的留保条件が明らかにされた立場に向けて取り組む
183
7 留保条件が明確化された価値的立場の背後にある事実的仮説を検証する 185
8 言及していることの関連性/妥当性を検証する 186
というプロセスが述べられています。
例えば原子力発電では、コストが安いから賛成という意見と、地震が起きたときに事故が起きるから反対という意見があったとします。
それぞれ、
コストが安い→経済的な見方
事故→リスク回避的な見方
と価値を抽出し対立状況を確認。
同じような価値対立がありそうな
課題、「日本政府はすぐさま水俣病の原因と疑われたチッソの工場をとめるべきだったのか」
のような状況を検討します。
そして、元の問題の留保条件、日本は資源が足りないとか地震大国だといった条件をどんどんあげていきます。
そしてそれぞれの事実や言説を検証していきます。
このアプローチをとると、メリットデメリットをあげるだけで終わらず、
他の事例を検討する思考(アナロジー思考)を学べるし、留保条件を検討していくことでメリットデメリットどっちもあるね、えへへという相対主義に陥ることも回避できます。
こうした訓練を歴史授業で取り入れるために本書では、
現代の論争問題を教授するために教材を組織する方法 六つの教授学的アプローチ 194
1 内容的に自分たちと関わりがあると思われる時にその都度正規の歴史や政治の教育課程に現代の論争問題を差し挟む
2 日刊や週間の新聞やニュース雑誌を用いるプログラムを通じて、日常のニュースをその課程の主たる内容として扱う
3 時事を定期的に(通常は週一回)正規の計画された活動として扱う
4 教会と国家 アメリカ社会の民主化などのような主題を扱うテーマ史を通常の歴史過程の内容に差し挟む
5 歴史的危機アプローチ 現代の問題を分析したり説明したりするのに役立つ有益な一般化を求めて特定の重要な歴史的エピソードや時代について確認し分析する
6 問題主題アプローチ 特定の主題に優先権を与え過去のある時点から現在の問題の定義に至るまで展開しようとする
195
という提案もされています。
今後も討論授業、論争問題を扱う授業にチャレンジしていきたいなと思います。